【 エスコート 】


 
―2―




 鈴原の手を取ったまま、強引に店へ連れ込むと支配人役の男が現れる。

 俺は内心舌打ちし、片手をかざしてソイツを止めた。

「こっちはいいぜ、ヘルプも要らねぇー」

 そう言い捨て、おたついている鈴原を引っ張り空席へ向かう。

「あのねぇ!…ってうわっ、ちょっ…なに…っ」

 二人がけのソファーに座るよう促し、俺はその隣へ腰を下ろす。

 コレくらいでナニ慌ててんだ、コイツ?

「く、九条くん、ちょっ、ちょっと腕、腕!」

「腕?」

 コイツ、背凭れへ回した俺の腕に焦ってるのか?

 いやまさかな。こんなの普通の事だし…

「腕どけてよ」

 まんまかよ!

 つか順調に嫌がってるけど、なんかムカつく。

「こんな事でギャーギャー喚くな、ホストなんだぜ? こんなの基本だろ」

 駄目押しに背凭れに預けていた腕で、そのまま鈴原の肩を抱き寄せる。

「ぎゃあ!!」

「…ぎゃあってオマエ」

 ホントにまだ序の口だろうが…

 そもそも俺はまだ考えてた嫌がらせを何も実行してねーっつの!

 こんなんでコイツはマジ年上なのかよ?

「注目浴びてるぜ、もう少し大人しくしろよ」

「あうぅ…」

 鈴原は真っ赤になりながら手で口元を覆う。

 やっと静かになった。

 そこへメニューを持った給仕係りが現れ、笑顔で鈴原に声をかえた。

 …あーなんかウゼー。

 早く散れ、と目配せしたが伝わるわけもない。

 だったらとっとと追い払うまでだ。

「フルーツ盛りとナッツ皿とジンジャーエール2つ」

 堅苦しい学校行事じゃ酒も出ねぇ…ホストクラブが聞いて呆れるぜ。

「って待って、なに私の分まで勝手にオーダーしてんのよ!」

「一々うるせー女だな、でなにがいんだよ? ここじゃバケツの水は出ねーぞ」

「はぁ? あ、あれは九条くんが…」

「つーか早く頼めよ」

「っ……もう! えっと、じゃあ私はアップルティーで」

「アップルティーねぇ…」

「な、なによ?」

「似合わねぇーな、ククッ」

「うるさいわね、ほっといて!」

 俺に直接楯突く奴はそういない。

 ましてやそれが女ときた。

 男なら若干いても、女は鈴原以外お目にかかった事ないぜ。

 マジでムカつくのにコノ軽快なテンポのやりとりはむしろ心地い。

「…あ、あのー」

 給仕係りに口を挟まれ、俺は思わず舌打つ。

「ちっ…フルーツ盛り、ナッツ皿、ジンジャーとアップルティーだ」

 早く持って来い、つーか邪魔すんな。

「かしこまりました…、少々お待ち下さい」

 立ち去る給仕に鈴原は会釈し、次いで俺に向き直る。

「態度悪過ぎ、こんなのでよく客が入るわね…はぁ」

「だからコレはアンタ仕様」

「だからね、私仕様とかはいいってば!」

 ふん、鼻で息をつき、俺は再びホスト仕様の笑顔を作る。

 肩を抱き寄せているから普段と違って鈴原との距離が近い。

「『祥慶パラダイス、指名ナンバー1ホストのリクだ。ヨロシク先生』」

 わざと低めた声で、鈴原の耳元に囁いてやる。

 案の定、腕の中の躰はビクリと跳ねた。

「『ふふっ、耳弱いのか、可愛いね』」

「……っ…っ…っ」

 いや、つーか声もなく口パクパク動かす奴ってマジでいたんだ。

 初めて見たぜ…超傑作!

「ブッ、くくくくっ…アハハハハ」

「…〜〜〜っ、ちょっ、っていか、笑いすぎ!」

 真っ赤になりながら耳を押さえて諌められてもな?

 はっきり言って効果ないぜ。

 つか、こいつの反応面白すぎ。

「『ごめんごめん、姫があんまり可愛い反応するものだから』」

「かわっ…っていうか気持ち悪っ! 気味悪いよその喋り方! そんな九条くんは九条くんじゃない!」

「っだろ? だからアンタ仕様で相手してやってたんじゃねーか」

「〜〜〜もう、ほんっと口の減らない!!」

 そのままなら無い様子の鈴原に、俺は気をよくしていた。

 肩を抱いている手で、柔らかそうな髪を弄る。

 指先にクルクルと絡ませて遊ぶと、くすぐったげに身じろいだ。

 鈴原は物言いたげにしつつもグッと息をつめ、対抗意識からかクールを装った。

 動揺してるのバレバレだけどな。

「…お待たせしました」

 静かな攻防戦に気付くわけもなく、給仕係がテーブルに注文の品を並べだず。

 コイツが消えりゃもう邪魔は入らない…

 給仕係は立ち去りがたげに鈴原へ微笑みかた。

「ごゆっくりおくつろぎ下さい、鈴原先生…なにかあ…」

「おい」

 余計な事は言うんじゃねーっつの。

 行かないで欲しげな鈴原が給仕係を引き止める前に牽制しとくか。

「行っていいぜ」

「えっ? あ、あぁ…」

 とっとと消えろ。

 渋々立ち去る給仕係にほくそえむ。





 さて、そんじゃ本番。

 どうしてやろう?











むぎたん逃げてー!!逃げてー!!(笑)
どうして駄目な奴ってこんなに愛しいんでしょ?
この報われなさ感も愛しさを増幅させるんですかね?
っていうか、フルキス2での彼はどんな役どころなんだろ?わくわくv

早くフルキス2やりたーい!!!楽しみだなー九条END(無いだろソレ!!)


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