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英二郎はむぎを一目見るなり眉をしかめ、 「君はまだそんな事をしてるのか……自分がどんなに危険な立場に置かれているのか、全然解っていないようだね」 と、いつも通りの大袈裟なリアクションで嘆く。 「な、なんの事ですか?」 むぎはギクリとなりながらも慌てて誤魔化した。 どうしてバレているのか皆目検討もつかないけれど、英二郎は出合った頃からなにもかもお見通しのようだ。 「否、言わなくとも解っているとも…」 「…なんの事だか私には」 「とにかく、この件からは早く手を引くんだ、むぎ君!」 「………」 「いいね?」 「で、でも…」 今までよりも真剣な眼差しで念を押され、むぎは言葉に詰まる。 「でもじゃない、本当に危険だと言っているのだ!」 僕が言うのだから間違いない、そう続けた英二郎の口調はとても厳しくて、なんだからしくない気さえした。 「……なんなんですか?」 「うむ?」 「いったいなにが危険だと言うんですか?」 むぎは誤魔化すのも忘れ、なにかを知っていそうな英二郎に詰め寄る。 「お願いです、少しでもなにかを知っているのなら教えて下さい!」 まさか、お姉ちゃんの事と関係があるの? そんな思いが脳裏をよりぎ、むぎは必死で問いかけた。 英二郎はそんなむぎの縋るような眼差しに一歩後退し、 「ずるいな君は…」 と頬を赤らめる。 「え?」 「そんな可愛らしく懇願されては、どうしたって断れなくなるじゃないか、マ・シェリ…」 「かわ…」 むぎは赤面しながら一瞬言葉につまる。だけどすぐに気を取り直す。 今、最も重要なのはそんな事じゃない。 「…だ、だったら答えて下さい、お願いです!」 「そうだな…この際むぎ君にもはっきり言っておくべきなのかも知れない…」 むぎは緊張に息をのむ。 「ど、どうして私が危険なんですか?」 「御堂家に住む男4人……、彼等は君にとってあまりにも危険だ!」 「……へ?」 英二郎は舞台俳優のようなオーバーアクションで苦悩のポーズをとり、続きを早口で捲くし立てる。 「若く自制のきかない獣の巣窟に、君のような魅力的な小鳩が暮らしていては彼等にとって良くない、断じて良くないのだよ!男は狼、そう、君は眩しすぎてあまりにも目の毒!つまり青少年の煩悩を刺激してしまう程、君が素敵なマドモアゼルだという事だ。…彼等だとていつまでも紳士ではいてくれまい!ウム!」 「………」 「さぁ、そうと決まれば、そんな危険な家からは早く出て行くのだ!」 「……………………」 むぎは半眼になって溜息を漏らす。 「…どうしたのだね?」 「……そんな事でしたか」 「そんな事ではなーい!」 彼等4人にとって自分がそういう対象じゃない事は明白で、それを懇切丁寧に説明するのも馬鹿馬鹿しい。 むぎは適当に答え、とっとと踵を返す。 「私でしたら大丈夫ですからご心配なく。話しがそれだけなら、私そろそろ行きますね、では」 「ノン!本当に君は解っていない」 「油断大敵という先人の言葉を…(うんたらかんたら)」 背後で騒いでいる英二郎の戯言など、むぎは聞いてられないとばかりに足早に遠ざかる。 結局この日も、姉につながる有力な情報は得られそうになかった… 「…さて、早く帰らなくっちゃ」 家での仕事が待っている。 ■ いや、そこが本当に危険である事に早く気付こうや!(ってツッコミv)■ 【END】 |